進撃の巨人の最終巻(34巻)が2021年6月9日に発売されました。
前巻を読み終えた時点では
「ここからどうやって完結させるんだ??」
ととても残り1巻ではうまく物語を畳めないのではと大きな不安を抱いていましたが、見事にストーリーの幕を閉じてくれました。
※単行本を何回も読んでいるガチ勢ではないため、深い考察はできないにわか目線の感想ですのであしからず。
最終巻の大まかなあらすじ
パラディ島以外の世界の全てを破壊するエレンとそれを阻止するアルミンたち。
巨大なエレンの上で戦うも、始祖の巨人の能力で歴代の9つの巨人たちが傀儡となってアルミンやミカサたちに襲いかかる。
間一髪のところで空を飛べるようになったファルコが助けに来る。
一方、オカピの巨人に捉えられ、座標の中でジークと対話するアルミン。
「生きることはいずれ死ぬこと」と死を受け入れていたジークだが、アルミンとの会話でクサヴァーさんとキャッチボールをしていた何気ない日常こそが楽しかったことを思い出す。
ジークの意思に突き動かされ、傀儡となっていたはずの歴代の9つの巨人・ベルトルトやユミルがライナーやアニを助ける。
自らが死ぬことでエレンを止めることを選んだジークがリヴァイに首を差し出し、ジークが死んだことで進撃の巨人の動きが止まる。
マーレの家族と再会し涙するピークやガビたち。
しかしそれも束の間、進撃の巨人から出る煙によって無垢の巨人にされてしまうコニーやジャンなどのエルディア人たち。
ライナーが「俺たちはどうすれば報われるんだ」と嘆きながら戦う中、エレンが会いにきた記憶が戻ったミカサは、覚悟を決めてエレンを殺すことを覚悟する。ずっと外していたマフラーを巻いて。
アルミンやリヴァイの力を借りてついにエレンの元へ辿り着いたミカサ。
全てを受け入れているかのようなエレンの表情。
エレンの首を切り落とし、首だけとなったエレンにキスをするミカサ。
それを見て満足そうな表情の始祖ユミル。
エレンは死に、巨人の力はこの世から完全になくなった。
感想
どう考えてもハッピーエンドは待っていないだろうと思っていたのですが、最後は意外にも穏やかな結末が待っていました。
主人公であるエレンが人類大虐殺を目論んでいる以上、エレンの仲間がそれを止めるか人類大虐殺は遂行されパラディ島のみに平和が訪れるというエンドしか待っていないと思っていました。
結果的に主人公のエレンは死んでしまったのですが、巨人の能力はこの世からなくなり、残された仲間たちは救われたのではないでしょうか。
誰も死ななくてよかった
前述の通りエレンは死んでしまいましたが、他のキャラクターが誰も死ななくてよかったです。
前巻までで主要人物がバンバン死んでいたので、最終巻の激しい戦いの中で絶対に誰か死んでしまうだろうな…と思っていたので良い意味で予想を裏切ってくれました。
特にライナーやリヴァイなんてこれまでの傾向や雰囲気からして絶対に死ぬと思っていましたからね。
アニが死んだと思っていた父親と再会するシーンも感動ものでした。
エレンがミカサとアルミンに本当の気持ちを伝えていてよかった
ミカサに「ずっとお前が嫌いだった」と言い放ち、アルミンをボコボコにして決別していたエレン。
前巻でも、説得して止めようとするアルミンたちに対して「対話は必要ない」と突き放していました。
しかしエレンはきちんとミカサやアルミンと個別に会話をして、自分がこれからしようとしていることや他に方法がなかったことなど、心のうちを明かしていました。巨人の力で全ての記憶を消していただけだったのです。
直接的な描写はありませんでしたが、アルミンやミカサ以外にもジャン・コニー・アニ・ライナーたちにも話をしていたようですね。
エレンとミカサ・アルミンの対立の構図は読んでいて本当に辛くて悲しかったので、お互いがきちんと本音で話し合い納得した上での結末だったことがわかってほっとしました。
特にエレンがアルミンに対してミカサへの未練をカッコ悪いぐらいに吐露したシーンはよかったですw
ラスト4ページは必要だったのか
エレンの死後3年が経ち、エレンの意思を継ぎ未だに島外人類の絶滅を目論むイェーガー派の残党。
彼らからすればアルミンたちはパラディ島を裏切り、島の希望・エレンを殺した逆賊でしかありません。
しかしそんな彼らとの対話のためパラディ島へ船で向かうアルミン一行。
女王ヒストリアは、逆賊の親族であるジャンの家族やコニーの母親を真っ先に匿ってくれたそうです。それは裏を返せば、家族にさえ怒りの矛先が向かうほどイェーガー派にとっては憎むべき存在だということ。
果たして平和的解決はできるのでしょうか。
__と、明確な描写があるのはここまで。
ラスト4ページは、エレンが眠っている木の下にいるミカサ。結婚して家族を持ったのでしょうか。年老いても必ずエレンの墓参りをしている様子。マフラーを巻いたまま年老いて亡くなったミカサ。
徐々に建物が建設され、開発される街。戦争があったのか、破壊される街。
そしてまた再建される街。
どれくらいの年月が経ったのでしょう。
周りがどれだけ変化しても、エレンが眠っている木だけは侵されることはなく、どんどんと巨木になっていきます。
そして最後に子供(ミカサの子孫でしょうか)がその木に辿り着いたところで終わり。
僕は正直、ちょっと蛇足だと思ってしまいました。
エレンが自分を犠牲にしてまで守りたかった故郷の島で、結局また争いが起きている。
人類は過ちを繰り返す生き物だということが示唆されている気がして、少し悲しい気持ちになりました。
きれいごとだけではない部分こそが「進撃の巨人」という作品の本質であり魅力でもあるのは重々わかっているのですが、あのページ(というよりあのコマ)だけは余計だったかなぁ。
まとめ
とかなんとか言いつつも、ラストはセリフもないし読み手の受け取り方次第だと思うので良い終わり型なんてのは一概には言えません。
「世界は残酷だけど美しい」というこの作品の軸をしっかりと最後まで通した結果でもあると思います。
これだけ完成度の高い作品を、きちんと完結してくれて広げた風呂敷をきれいに畳んでくれた諫山先生に拍手です。
始まった時はまさかこんなに奥が深い漫画になるとは思ってもみませんでした。
ただただ巨人と人類が戦うってだけの話題性だけで突っ走る漫画だと思ってました。
こんなにどのキャラクターにも感情移入ができて、誰もが自分の正義を貫いていて、ストーリーにも魅力のある漫画はなかなかありません。
終わってしまってのは寂しいですが、良い作品が面白いまま完結を迎えたのは1人の漫画好きとしてととても喜ばしいことであります。
この漫画をリアルタイムで読むことができてよかったと心から思います。