2023年の日本シリーズはオリックス・バファローズ対阪神タイガース。
1964年の南海ホークス対阪神タイガース以来、実に59年ぶりの関西ダービーとなった。
オリックス・阪神ともにぶっちぎりのリーグ優勝で、CSも勢いそのままに突破し遂に実現した関西ダービー。
第1戦オリックスの大エース・3年連続投手4冠の山本由伸がまさかの7失点KOの大波乱が起こるも、オリックスはその後盛り返し第6戦が終わった時点で3勝3敗の5分。
しかも総得点が23-23というがっぷり四つ。
運命の第7戦に登板するのは、第2戦で阪神打線を無失点に抑え、見事チームを勝利に導いた宮城大弥。
多くのオリックスファンが勝利を信じて応援したが、結果はご存じのとおり1−7の完敗。
オリックスは日本一2連覇を逃し、阪神に38年ぶり2度目の日本一を献上することとなった。
と、ここまではプロ野球ファンなら誰しもが知る客観的事実。
ここからは現地に足を運んだしがないオリックスファンの感想をつらつらと書いていく。
めっちゃ盛り上がった関西
まず、今年の日本シリーズは関西ではめちゃくちゃ盛り上がっていた。
関東や他の地域がどうだったのかはわからないが、関西はとにかく盛り上がり、テレビは連日どの時間帯も日本シリーズのことばかり。
職場でも普段プロ野球の話をしない人たちも口を開けば日本シリーズの話題を繰り広げていた。
過去2年間もオリックスは日本シリーズに進出していたが、関西にここまでの盛り上がりはなかった。(というか関西で盛り上がっていたのはオリックスファンだけだった。)
おそらく、相手が同じ関西球団であるオリックスかどうかはあまり関係がなく、阪神タイガースが圧倒的強さでペナントを駆け抜け、日本一に大きな期待がかかる日本シリーズだったからこその注目度であったことは認めざるを得ない。
大方の世間のイメージ通り、私もオリックスファンとして阪神タイガースに対して思うところはあった。
その理由はやはり、テレビや新聞などのメディアの取り上げ方の違いによるところが大きい。
もちろん阪神の選手やチームのことが嫌いなわけではないが、オリックスの情報はあまり取り上げず、阪神のことばかり報道するメディアに辟易としていた。
今回の日本シリーズでも実況が不公平だったのではないかと一部を騒がせていた。
こういった思いを、他球団ファンは「ひがみ」と捉えるだろうか。
実際こうして書き連ねていると、純度100%の「ひがみ」だなと我ながら思う。
しかし我々だって好きでひがんでいるわけではない。メディアがそうさせるのだ。
阪神ファンの数の暴力がそうさせるのだ。
とにもかくにも、我々オリックスファンがメディアの暴力でタコ殴りにされるのを避けるためには、今回の関西ダービーは必ず勝たなければいけない。
阪神タイガースだけには絶対に負けるわけにはいかないのだ。
11月5日京セラドーム気温25℃
ーーーと、こんな思いを抱いて向かった11月5日京セラドーム大阪。
11月だというのに気温は高く、半袖で十分だった。
グッズショップが大混雑するのは目に見えていたため、試合開始の18:30の3時間前には現地に到着。
この日はオリックスと阪神のコラボグッズの販売は終了していたため、そこまで混み合うこともなく先発の宮城のタオルを買うことができた。
なんといっても宮城は第2戦を6回無失点に抑えている。しかも前日の山本由伸は9回1失点、あのダルビッシュを超える日本シリーズ1試合の最多奪三振記録を更新した。
流れは完全にオリックスに来ている。
相手先発は今シーズン不調の青柳。日本シリーズは初登板。
これは勝てる未来しか見えない。
しかもしかも、私の現地観戦勝率は驚異の100%。6勝1分だ。
試合開始の40分前には一塁側の応援席に座り、選手たちの様子を見届ける。
周りにはたくさんのオリックスファン。
球場に来ると「こんないオリックスファンがいるんだなー!」と毎回思う。
だって、普段日常で身近にオリックスファンっていないんだもの。
オリックスファンを名乗ると「なんで??」と聞かれる。
阪神ファンはそんなこと言われないでしょ。
イカンイカン、またひがんでしまった。
阪神ファンはすごい
それにしても阪神ファンはすごい。
ファンの数もすごいが、応援の声量がすごい。
テレビで見ていてもあの地響きのような応援はものすごいが、現地で聞くとさらにすごい。音の振動がダイレクトに伝わってくる。一体感がすごい。
もちろんオリックスの応援も負けてないんだけど、こっちホームだよ?
まぁ実際球場の半分を阪神ファンが占めていたわけだけど。
そんなこんなで試合は進み、ノイジーに痛恨のスリーランを打たれてしまう。
かなり苦しい状況だけど、まだまだ逆転を信じて声を張り上げるオリックスファン。
しかし応援も虚しく反撃ができぬまま相手に追加点を許してしまう。
苦しい…ひたすら苦しい状況が続く。
それでも「今は我慢の時」とでもいうかのように声を張り上げる応援団と後ろにいた大声のお兄さんに勇気をもらい、私も諦めることなくひたすら声を上げる。
ペナントレースの試合だとトイレに行ったり食べ物や飲み物を買いに行ったり何かと席を立つんだけど、この日は最後まで一度も席を立たなかった。
一瞬たりとも目を離したくなかったし、選手にエールを送り続けたかった。
試合も終盤、日本一が近づいた阪神ファンの声量がますます上がるのと対照的に、少しづつ元気がなくなるオリックスファン。
それでも応援歌を歌い続ける。声を出していないとこの現実と向き合ってしまう。「負け」の2文字が頭をよぎってしまう。だから声を出し続ける。
9回ツーアウト。阪神ファンから聞こえる「あと一人」コール。
しかしそれをかき消すかのようなオリックスの応援。この時の両チームの声援は本当にすごかったと思う。
私もそれまでで一番声を出していたし、球場のボルテージは最高潮に達していた。
その場にいるかのようでいないかのような、なんとも形容し難い雰囲気がそこにはあった。
そんな中飛び出した首位打者・頓宮の特大の一発。
一瞬何が起きたかわからないような静寂の後、ダイヤモンドを一周する頓宮。
この日初めて周りのオリックスファンとハイタッチ。そうそう、これだよ。これがしたかったんだよ。
ありがとう頓宮。
その後マーゴにもヒットが出て、奇跡を信じて応援する中、ラオウの大きな当たり。
「いった!!」と思わず声を出すも、レフトノイジーのグラブにおさまりあえなくゲームセット。
終わった。
2023年のオリックスの戦いが終わった。
その後の光景はほとんど覚えていない。
阪神の選手がグラウンドに集まり、誰かを胴上げしている姿をなんとなく視界にとらえていた。
ふと気づくと涙が出ていた。
自分でもびっくりした。
選手の応援歌もろくに歌えないし、ファン歴も浅い。
1年を通して「泣くほど悔しい」ほど応援を頑張ってきたわけでもない。
周りの雰囲気にやられたというのもある。
しかし、それはまぎれもなく悔し涙だった。
「ファンも一緒に戦う」という言葉を聞くたびに、その言葉を嫌悪していた。
「一緒に戦うなんておこがましい。戦うのは選手たち。頑張っているのは選手たち。ファンは所詮遠くから声を上げるだけ」と。
しかし、この日確かに我々は一緒に戦っていた。選手とファンは一つのチームになっていた。でなければ他人のためにあそこまで声が出るわけがない。
涙の理由を冷静に分析すると、今度は自嘲の笑みが溢れた。
「自分、めっちゃオリックスのこと好きやん」
阪神は強かった
気持ちを整理し終わると、あふれてきたのは阪神へのリスペクト。
なぜなら、今年のオリックスはめちゃめちゃ強かった。日本一になった去年よりもぶっちぎりでリーグ優勝し、正尚という大黒柱が抜けても全員でカバーして全員で勝ってきた。
そんなオリックスを倒したんだから阪神はめちゃめちゃ強い。本当に強い。
一緒に観戦した友人ともその言葉を繰り返した。
「阪神は強かった」
ネット上ではたまにファン同士がお互いを煽ったり貶めるたりするようなやりとりが見受けられる。
けどああいうのは本当に一部のファンだけだということを知っておいてほしい。
本当の話、試合中自チームはもちろん、相手チームのことを悪くいうような野次は一切聞こえなかった。
「近本どんだけ打つねん!」とかはよく言ってたけど、汚い言葉は本当に聞こえなかった。
周りのオリックスファンも思うところは同じだったと思う。
「阪神は強かった」
行ってよかった初めての負け試合
それまで現地観戦無敗だった私。初めて現地で悔しい思いをしたわけだけど、現地でこの思いを味わえて良かったと心から思う。
テレビでこの試合を一人で観ていたら、きっと気持ちの整理ができなかったと思う。
現地では実況や解説の声が聞こえないというのも、悔しさを加速させないで済んだのかもしれない。
大勢のオリックスファンに囲まれて、負け濃厚でも大きな声で応援して、負けても相手チームのことを称えることができたのは現地観戦の良いところだと思う。
何より38年ぶりの阪神日本一の現場に居合わせられたことは、一人のプロ野球ファンとしてとても光栄なことだ。
それにしても、オリックスファンは贅沢になったものだ。
つい3年前までは2年連続で最下位で、Bクラス常連だった。
「このチームより下が3チームもいる状況を作るなんてありえなくね??」
とファンながらよく思ったものだ。
それが今ではリーグ優勝に飽き足らず、日本一になったにもかかわらず、2年連続で日本一になれないとわかるや、やれ采配がどうだの継投がどうだのと文句をつけたがる。
それを責める権利は私にはない。
コンビニ弁当ばかり食べていたオリックスファンにいきなりフランス料理を提供してきたのは中嶋監督に他ならない。
舌の肥えたオリックスファンを納得させるのは大変だろうが、できるだけ長きにわたって私たちファンに美味しいフランス料理を提供し続けてほしい。トレビアン。
日本シリーズ敗因分析
負け惜しみと言われるのを覚悟で、今回オリックスが日本一を逃した理由を分析していく。
・WBC組の疲労蓄積
日本中が熱狂した3月のWBC。例年のシーズンよりも早い調整で、特に投手は苦しんだことと思う。
特にオリックスは3年連続でポストシーズンに出ずっぱりのため、他のチームより単純に試合数が多い。
実際に、オリックスからは由伸・宮城・颯一郎・宇多川の4人がWBCに派遣されているが、今回の日本シリーズでは4人中3人に負けがついている。
この4人が万全だったなら…。
・全試合ホームの阪神
なんば線シリーズとも謳われた今回のシリーズでは、阪神のホームである甲子園球場と、オリックスのホームである京セラドームが使用されたが、阪神はペナントレースで京セラドームをホームとして数試合行っている。使い慣れた球場であり、言わば「準本拠地」なのである。
オリックスで例えると、京セラドームとほっともっと神戸で日本シリーズを全試合行ったようなものである。
オリックスにとって甲子園球場はめちゃめちゃアウェイだったのに対し、阪神にとって京セラドームはほぼホームだったのである。
この事実はシリーズ前から言われていたことだが、想像以上に阪神にとって利点となったのではないだろうか。
言うなれば阪神にとって、日本シリーズの相手がオリックスというのは悲願の日本一に向けて願ってもない相手であり、最も与し易い相手でもあったのではあるまいか。
オリックスを強豪集団へ!
敗因については、ラオウや頓宮や紅林のケガが…という意見も見受けられるが、頓宮も紅林もホームラン打ってるし、選手層の問題でもあるのでそれについては私は言及しないでおく。
それよりも今回の日本シリーズ現地で感じたのは、阪神ファンは熱狂的な人が多いということだ。
ファンの母数が違うから当然といえば当然かもしれないが、オリックスにはライト層のファンが多いと感じた。
それが悪いというわけではもちろんない。
実際私もライト層だし、オリックスは最近人気が出てきて若いファンが多い。
一方阪神は歴史が古いため、昔からの熱狂的なファンが本当に多い。
「応援で負けている」とは思いたくないが、熱量で阪神が勝っていたことは認めざるを得ない。
オリックスはリーグ3連覇を果たし、昨年は日本一を達成したとは言え、まだまだこれからのチーム。
今年は惜しくも敗退してしまったけれど、来年、再来年とチームが勝ち続けられるように、これからもより熱量を持ってオリックスを応援していくことをここに誓う!!