Dr.インクの星空キネマを読みました。
なんと2009年の作品だったんですね!
すごく今更というか、どうせ読むならえんとつ街のプペルを読めよと言われそうですが、友達が読んでいたので思わず借りてしまいました。
作者は皆さんご存知のキングコングの西野亮廣です。
いや、にしのあきひろさんです。
(絵本作家の時は平仮名表記)
絵本を描いているということはもちろん知っていましたが積極的に読む機会は今までなく、どんな作風なのかどんな話なのか前情報が全く無い状態で読みました。
そんな僕が読み終えて思うことは、
「西野、やるじゃん!」
です。
いやほんと失礼なのはわかってるし何様なんだよって感じですが、芸人キングコング西野しか知らなかった僕にはなかなかの衝撃でした。
テレビでは割といじられて、嫌われキャラですが、
「実はこの人めちゃくちゃ純粋で良い人なんじゃね??」
と思ってしまいます。
なんかとにかく心がほっこりする内容なんです!
ちなみにキネマはシネマ(映画館)と同じ意味で、違いを色々調べたんですがいまいちよくわかりませんでした!
そんな細かいことは気にせず感想を述べていきましょう!
本作は4つの短編に分かれているので、一つずつあらすじと感想を書いていきます。
まだ読まれてない方のためにできるだけネタバレはしないように書きます!
グッドモーニング・ジョー
あらすじ
グッドモーニング・ジョーは丘の上の古い天文台に住んでおり、一日中星を見ては笑っています。
街の人たちはそんなジョーを気味悪がっていました。
実はジョーは星空コーディネーターで、流れ星を動かしたり星に色をつけたり月を満月にしたり三日月にしたりしていました。
そんな彼の下に1人の少年が訪れ…
感想
変わり者で人から避けられている人が実は良い人だったり物語の鍵を握っているということはよくありますよね。
そして、そんな変わり者と心を交わすのはたいてい純粋な青少年です。
僕もそうですが、多くの人は変わり者に近づこうとはしないと思います。
それは、怖いからです。
変な人に変なことをされたらどうしよう。攻撃されるんじゃないか、恐ろしいことをされるんじゃないか。
しかし子供というのはそんな恐怖心や固定観念が無いのでジョーのような変わり者のところにも行けるのです。
特に日本は長い間鎖国をして自分たちと違う人種を恐れていた民族です。
ペリーが浦賀に来て開国してからわずか170年しか経っていません。
だから未だに新しい物、新しい人、新しい出来事に抵抗があるのかもしれません。
もちろんそうでは無い人もたくさんいます。
この話は星空コーディネーターというオシャンティな物を例えに、ぼくたちに物怖じしない勇気を教えてくれているような気がします。
赤いハシゴ
あらすじ
小さな星がありました。
人口の増加に対して土地が足りないその星は横に広がることをあきらめた末、上に広がっていきました。
そのため、どこに行くにもハシゴが必要でした。
長年ハシゴ屋をやっていたトキオでしたが、リフトの発展によりハシゴが売れなくなっていました。
そんなある日、とても大きな星が街のすぐ近くに流れてきました。
感想
個人的にこういう話が1番好きです!
事実とか関係なしに、これが実はこうなるんだよってのが好きなんです。
例えば十二支の順番がなぜあの順番になったのかとか、人参とゴボウと大根が何であの色なのかとか。
世界観もおもしろいです。
人類の生活圏は上に発展することはなく地下を開発していってますよね。
僕もふとした時に
「土地がないなら空を使えればいいのになー」
と思ったりします。
そんなもしもの世界を描いた作品。
そして主人公のトキオはみんなに笑われながらも無謀な挑戦をします。
誰がバカにしようと、自分の夢を実現さるために。
作者であるにしのさんが自分自身を投影しているのではないでしょうか?
そんな憶測もしてしまいます。
ドンドコ山のバケモノ
あらすじ
ある星のある村にドンドコ山という山があり、そこにはヤクという恐ろしいバケモノが棲んでいました。
ヤクは大きな音で太鼓を叩くので村人は迷惑しており、侍や猟師がヤク退治にでかけましたがペロリと食べられてしまいます。
そこに1人の目の見えない少女が迷い込んでしまいます。
感想
少し悲しく、とても優しい物語です。
少女は目が見えないため恐ろしい姿をしているヤクを怖がることなく笑顔で接します。
僕がこの話を読んですぐに思い出したのがドラゴンボールの魔人ブウ編です。
魔人ブウは自分の力を恐れ人々が逃げる様を面白がって攻撃しますが、目が見えない少年は魔人ブウを恐れない。
結果、魔人ブウはその少年の目が見えるようにし、牛乳を与え、少年に感謝されます。
ヤクも魔人ブウと同じように少女と触れ合うことで心境に変化が現れます。
僕はヤク=孤独な犯罪者
と捉えました。
昨今、様々な事件が起こり、事件の数だけ加害者が存在します。
表面だけを見ると悪いのはもちろん罪を犯した人間ですが、その背景には様々な要因があるはずです。
家庭環境、職場環境、病気などなど。
犯罪をなくすにはこういったバックグラウンドに社会が寄り添うことが重要だと思います。
誰かに必要とされたり、感謝されたり、社会の中で役割や生きがいを感じて生きる。
全ての人間がそういった生き方ができたなら、この世から犯罪はなくなるのではないでしょうか。
Dr.インク
あらすじ
世界の奥の奥のそのまた奥にDr.インクという脚本家がいました。
Dr.インクは世界中の人々が毎晩観る夢の脚本を書いています。
インクは忙しいので脚本が間に合わない日もあります。
間に合わなかった日はその人は夢を見ることができません。ある日、Dr.インクが体を壊して寝込んでしまいました。
アシスタントたちはDr.インクに元気になってもらえるように手を尽くします。
感想
上記3つの話を読んだ時点で「まあまあおもしろいけど現時点ではそこまでだな」と思っていたのですが、この最後のDr.インクでしっかりと綺麗にまとめてくれました。
物語を紡ぐ本って良いですよね。
伊坂幸太郎作品とか、劇団ひとりの「陰日向に咲く」に似たものを感じました。
そう言えばゴッドタンで西野と劇団ひとりは仲悪い設定でよくケンカしてますね。
何か影響されるところがあったのかな?
夢って本当に不思議ですよね。
おもしろい夢、楽しい夢、怖い夢、嫌な夢。
人に話そうと思ってもすぐに忘れちゃったり、「何であんな夢見たんだろう?」
って夢もあったり、続きを見たくても見れなかったり。
夢の脚本家がいるっていう発想、オシャンティです。
まとめ
あとがきに、「子供の頃の自分へのアンサー」と書いてあり、なるほどなと思いました。
流れ星はどうして流れるんだろう?
夢ってどうして見るんだろう?
きっと子どもの頃の僕もそんな疑問を一度は抱いたはずなのにいつの間にかそんなことを考えなくなっていました。
そんな子どもの頃の疑問を大人になっても持ち続け、その疑問に自分なりの答を出してあげる。
ステキやん。
ストーリー以外でいうと、絵のタッチも独特で良いですね。
背景がぎっしり詰まってて、少し不気味な印象も残ります。
子どもにすればちょっと怖く感じるかもしれませんが怖いくらいが子どもの記憶に残るでしょうね。
僕も子どもの頃にたくさん絵本を読みましたがほとんど忘れています。
その中で「おしいれのぼうけん」という絵本はすごく怖かったので今でも覚えています。
そんなところも意識して描いているのだとしたら、さすがです。
あまり期待せずに読んだので、かなり楽しんで読めました。
子どもが読んだらどう思うんだろう?
僕は独身なのでいつか子どもにも読ませてみたいと思います。
この絵本でこれだけ楽しめたので、話題になった「えんとつ街のプペル」はどんなにおもしろいんだろう?と期待が膨らみます。
近いうちにそちらも読みたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます(^^)