ぽぷら日和

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100歳になったらあの娘とライブに行きたい

 

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織田信長が「人間五十年ーー」と詠んでから400年以上が経つ。

 

人間の寿命は伸びに伸び、50年どころかその倍。

人生100年時代と言われる今日。

 

この事実を信長が知ったら、ホトトギスが豆鉄砲を喰らったような顔で驚くことだろう。

 

 

寿命が倍近く伸びたとはいえ、それは手放しに喜べることばかりでもない。

 

医療問題、年金問題、介護問題。

 

現実的なことを考えれば問題は山積みだ。

 

しかし今回は、現実には少しばかり目を背け、理想の話をしたい。

 

 

 

「100歳になったら何をしたいですか?」

 

 

あなたはこんな質問を受けたことがあるだろうか。

考えたことがあるだろうか。

 

学生時代、僕はこの質問を受けたことがある。

 

学校の創立100周年だかなんだかで、アンケートを取られたのだ。

 

そしてその回答は、個人の名前とともに小さな季刊誌に載せられるらしい。

 

当時の僕は、このアンケートを「大喜利」だと捉えた。

 

面白いことを書かなければいけないという、謎のプレッシャーに襲われた。

 

いや、別になんてことのないただのアンケートだから適当に書けばよかったんだけど、面白い回答を求められている気がした。(もちろん誰も求めてはいないのだけど。)

 

実際、100歳になった自分がどうなっているのかなんて皆目見当もつかなかったし、100歳になった自分が何をしたいかなんてわかるわけがなかった。

 

僕は考えた。

 

100歳になった自分がどうなっていたら面白いのか。

 

100歳になった自分が何を望んでいたら面白いのか。

 

その一方で、あまりに変なことを書いてすべって恥をかくのも嫌だった。

 

季刊誌に載るということは、学生以外の目にも触れるし保存もされるということだ。

 

ウケを狙いすぎず、なおかつ後から見返しても恥ずかしくないような、クスっと笑える回答は何だ??

 

 

考えに考えて僕は1つの回答を導き出した。

 

そしてこう書いた。

 

 

 

『100歳になっても裸眼でいたい』

 

 

……

 

 

……いや、ちょっと待ってくれ。

 

 

わかる、言いたいことはわかる。

 

 

うん。絶妙に面白くない。

 

本当に面白くない。

 

全く面白くない。

 

 

眼の衰えというのは深刻だ。

 

学生の頃は視力が良かった僕も徐々に視力が下がり、今は夜間運転する時はメガネが必須だ。

 

今となっては

 

『100歳になっても裸眼でいたい』

 

というのはボケでもなんでもなく、切実な願望にしか聞こえない。

 

どうせすべるのならもっとくだらないことを書いて盛大にすべれば良かったのだ。

 

すべるというのはその時は笑えないし恥ずかしいが、後から思い返すと笑えるものだ。

 

だが僕はボケにいった挙げ句に「すべりたくない」という尊大な羞恥心から、置きにいった微妙な回答をしてしまい、すべることすらもできなかったのだ。

 

全くもってつまらないこんな回答をしてしまったあの日の自分をぶん殴ってやりたい。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

アンケートに回答して程なくして、その季刊誌は発行された。

 

ほとんどの学生が

 

「かわいいおばあちゃんになりたい」

 

「家族に囲まれて幸せに暮らしたい」

 

などとありきたりなことを書いている。

 

そんなありきたりな言葉に混ざって印字されている僕の

 

『100歳になっても裸眼でいたい』

 

ああ、やっぱり面白くない。

 

そんな中、一つの文章が僕の眼を引いた。

 

 

 

『100歳になってもヘドバンしたい!』

 

 

 

…やられた。

 

これもう正解じゃん。

 

「100歳になったら何をしたいですか?」

 

という大喜利のお題に対する答じゃん。

 

100歳という年齢と「ヘドバン」という言葉のミスマッチがおかしいし、100歳の老人がヘドバンしているところを想像するだけで笑えてくる。

 

それでいて「いつまでも健康で趣味に没頭していたい」という希望がこの短い文章には込められている。

 

(※ヘドバンとはヘッドバンギングの略語で、主にロックバンドのライブなどでみられるリズムに合わせて頭を上下に激しく揺さぶる動作のことである。)

 

一体誰がこんな面白い回答を書いたんだ??

 

 名前を見ると、そこにはR子ちゃんの名前があった。

 

「ウソだろ…?あのR子ちゃんが…?」

 

R子ちゃんとは話をしたことがなかったが、まじめな優等生タイプだ。

 

R子ちゃんがこんなふざけた回答をするはずがない。まして、ヘドバンなんてするわけがない。

きっと印刷ミスか、誰かが悪ふざけをしたに違いない。

 

そう思いながらも僕はR子ちゃんに直接確認してみることにした。

 

 

しかし驚くべきことに、「100歳になってもヘドバンしたい!」と書いていたのはR子ちゃん本人だった。

 

ヴィジュアル系のバンドが好きで、ライブにもよく行っているらしい。

 

本当に人は見かけによらない。

 

 

このことをきっかけに、R子ちゃんとは仲良くなった。

 

と言っても、しょっちゅう話をしたり一緒に遊びに行ったりするようになったわけではなかった。

 

学校ですれ違えばお互いに笑顔で挨拶をする。その程度だった。

 

でもその度に

(R子ちゃん、あんなにまじめなふりしてヘドバンとかしてるんだよな…)

 

と思うと、R子ちゃんの秘密を知っているような気がしてなんだか嬉しかった。

 

 

しかし、次第に僕は疑問を抱くようになった。

 

「本当にあのまじめなR子ちゃんがヘドバンなんてするのか??」

 

と。

 

口先でいくらヴィジュアル系が好きだの100歳でもヘドバンしたいだの言われても、実際にR子ちゃんがヘドバンをするところを見たことがない。

 

 

もしかしたら全てウソだったのかもしれない。

 

いや、まじめなR子ちゃんがウソをつくことの方がありえない。

 

一体どっちが本当なんだ。

 

見たい…!どうしてもR子ちゃんがヘドバンしているところを見たい…!!

 

そして叶うことなら一緒にヘドバンしたい…!!

 

 

ーーーーーーーー

 

そんな悶々とした日々を過ごしていたある日、最大のチャンスが訪れた。

 

仲間内の男女グループでカラオケに行くことになり、そこにはなんとR子ちゃんも来るという。

 

「やった!!ついにR子ちゃんのヘドバンが見れる!!」

 

僕の興奮は最高潮だ。

 

 

カラオケ当日、R子ちゃんは本当に現れた。

 

ついに、ついに今日、R子ちゃんのヘドバンが見れるんだ…!!

一緒にヘドバンするんだ…!!

 

アホみたいに騒いでいる男子たちを横目に、僕は終始R子ちゃんの様子を観察していた。

 

しかしR子ちゃんがヘドバンをする様子はない。

 

選曲が悪いんだろうか?

 

確かにみんなポップな曲ばかりで、R子ちゃんの好きなヴィジュアル系の曲を歌う人は誰もいない。

 

しまった!

 

こんなことなら僕がヴィジュアル系の曲を調べて練習しておくべきだったんだ!!

 

ああ!千載一遇のチャンスなのにいい!

 

何をしてるんだ僕はあああ!!

 

 

そんな時、R子ちゃんにマイクが回ってきた。

 

 

そうか!R子ちゃん自身がヴィジュアル系の曲を選曲している可能性もある!!

 

 

というかその可能性にかけるしかない!!

 

 

お願いだR子ちゃん!ヘドバンを見せてくれええええ!!

 

 

……

 

 

 

「♪ずっと一緒にいた~二人で歩いた一本道~」

 

 

……

 

 

バラード歌ってるううううう!!!!

 

絢香の三日月歌ってるううううう!!!!

 

 

こうしてR子ちゃんのヘドバン姿を見ることなくカラオケは終了した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

あれから約10年が経った。

 

学校を卒業して以来、R子ちゃんには一度も会ったことがない。

 

R子ちゃんが今どこで何をしているのか全くわからない。

 

未だにヴィジュアル系のライブに行っているのだろうか?

 

未だにヘドバンをしているのだろうか?

 

僕はといえば、今ヘドバンなんてしようものなら首ごともげて飛んでいってしまいそうだ。

 

でも、まじめなR子ちゃんなら、あの日書いた

 

『100歳になってもヘドバンしたい!』

 

という目標を忠実に達成するため、日々首を鍛えているんじゃないだろうか。

 

ライブに行けなくても、部屋でヘドバンしてるんじゃないだろうか。

 

年齢だけはあの頃より着実に100歳に近づいたけど、100歳なんて僕にはまだまだ想像もつかない。

 

けど、もし今あの頃と同じ質問をされたら、「100歳になったら何をしたいですか?」と聞かれたら、僕はこう答える。

 

 

『100歳になったらR子ちゃんとライブに行きたい』

 

 

今度こそ、R子ちゃんのヘドバン姿を目に焼き付けたい。

 

そして、一緒にヘドバンがしたい。

 

ああそうだ、ヘドバンする時はメガネを着用していたらきっと邪魔になるだろう。

 

だからやっぱりこれも追加でお願いします。

 

 

『100歳になっても裸眼でいたい』

 

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