ぽぷら日和

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うどん県・香川でうどんの妖精と出会った(3000文字チャレンジ)


学生の頃、男女10人くらいで香川県にうどんを食べに行った。

 

 

どうしてもうどんが食べたかったわけじゃないけど、夏休みに日帰りで香川に行こうという話になった。

 

 

あの頃は行き先なんてどこでもよかった。

 

ただ友達と旅行ができればそれだけで楽しかったから。

 

 

日帰りだったから、夜に集合して夜中に出発した。

 

奈良県から香川県まで車で6時間くらいかかる。

 

 

当時僕は免許を持っていなかったので、というか免許を持っている方が少数派だったので、4人くらいが交代で2台の車を運転してくれていた。

 

 

免許持ってない組はアホみたいに騒いで、疲れたら眠って、今思い返すと我ながら腹立たしい。

 

 

それでも、ドライバー達は「全然大丈夫やで」と言って怒りもせずにひたすら運転してくれていた。

 

 

さすが、免許持ってるやつは大人だ。と思った僕は子どもだった。

 

ちなみになぜ「香川=うどん」と言われるほど香川県でうどんが盛んになったのか知ってますか?

 

僕は知りません。

 

この記事にはそういうタメになることは一切書いてないので気になった人は自分で調べてください。

 

 

なんやかんやで早朝に香川に着いた僕たちは、うどん屋さんが開く時間まで車内で少し仮眠をしながら待った。

 

 

今回の旅の目的は1日でできるだけたくさんうどんを食べることだ。

 

日帰りだから食べれても多くて3食。

 

せっかく6時間もかけて来たんだから、しばらくはうどんを食べたくなくなるくらいにはうどんで満たされたい。

 

 

ぐるなびか何かで人気の店を調べた僕たちはさっそく一軒目のうどん屋さんを訪れた。

 

 

さすが、うどん県の中でも人気のその店はすごい行列だ。

 

しかしうどん屋さんの回転率は高い。

 

どんどんと列は進み僕たちは店内へと足を踏み入れた。

 

初めて食べる香川のうどん。

 

うどんにうるさくない僕でもわかる。

 

「こ、これは!めっちゃコシがある!!」

 

はい。もうね、これしかないよ、うどんを食べた時の感想なんて。

 

でも言い換えればそれが全て。コシがあるかないかでしょ、うどんは。

 

そういう意味では最高の誉め言葉。

 

 

漫才を見て、「このネタはボケのテンポが良くてツッコミのタイミングが~」なんて言うのはプロの審査員だけで十分なんだよ。

 

 

「おもしろい」か「おもしろくない」か。それだけでしょ。

 

うどんも一緒。コシがあるか否か。

 

 

空腹も相まって一軒目のうどん屋さんを十分堪能した僕たちは、お腹を空かせるためにも海岸沿いをぶらぶらしようと海へと向かった。

 

 

海が無い奈良県民は海へ強烈な憧れを抱いている。

 

海を見つけたら必ず、次の島を見つけた海賊のように

 

「海だー!!海が見えたぞーー!!」

 

と言わなくてはならない。

 

それはさながら初めて外の世界を見たラプンツェルのようでもある。

 

 ちなみにラプンツェルの声優はしょこたんだけど、歌の部分は他の人が歌ってるって知ってた?

 

 

さて、興奮した僕たちが海岸を散策していると、真夏の海岸には似つかわしくない小ぎれいな服装をした老齢の男性を発見した。

 

 

威厳がある堂々としたたたずまいは、どこか北大路欣也を彷彿とさせた。

 

北大路欣也(以下KINYA)は僕たちの方へどんどんと近づいて来て、僕たちに話しかけてきた。

 

「君らこんなところで何してるんや」

 

KINYAは意外にも関西弁だった。

 

 

僕たちは少し戸惑いながらも、うどんを食べに来たこと・今はお腹が空くまでぶらぶらしていることをKINYAに伝えた。

 

 

するとKINYAは

「インターネットに載ってるような店はあんなんあかんで。ほんまにおいしい店はインターネットには載ってないからな。」

 

と語った。

 

なるほど、確かに言われてみればそうかもしれない。

 

ネットの情報なんてどうにも操作のしようがある。

 

それを見てその店に食べに行くのはほとんど他県の人だろう。

 

普段うどんを食べ慣れている地元の人こそ、真においしいうどん屋さんを知っているはずだ。

 

更にKINYAは言う。

 

「おっちゃんが知ってるおいしいうどん屋教えたろか?」

 

これはかなりラッキーだ。

 

うどん県民がおススメする、ネットには載ってないうどん屋さんなんて、おいしいに決まってるじゃないか。

 

こんなにおいしい情報を手放す手はない。二つ返事で誘いに応じた。

 

「じゃあ行こか」とKINYA。

 

 

……え?一緒に行くの??

 

と思ったがKINYAは僕たちの車に乗る気満々だった。

 

 

いや、場所さえ教えてくれれば良かったんだけどなぁ…と思いつつも僕たちはKINYAを乗せ、KINYAのナビ通りに次のうどん屋さんへと向かった。

 

 

KINYAおススメのうどん屋さんに着くと、これまたかなり行列が並んでいた。

 

正直、もっと人知れずやってる隠れた名店みたいなのを期待してたのでちょっとがっかりした。

 

でも、確かにぐるなびには載っていない店だった。

 

「ここは釜揚げがおいしいんや」

KINYAはそう教えてくれた。

 

確かに店内を見渡すと、釜揚げうどんを注文しているお客さんが多かった。

 

僕たちはほぼ全員がKINYAのアドバイス通り釜揚げうどんを頼んだ。

 

2軒目の香川のうどん。

 

「こ、これは!めっちゃコシがある!!」

 

1軒目同様、コシがあってすごくおいしい。

 

……でも、でもでも。

 

1軒目との違いがわからない!!

 

KINYAは

「インターネットに載ってるような店とは全然ちゃうで」

 

と言っていたが、舌の肥えていない若者には全然違いがわからなかった。

 

わかることと言えば

「どちらの店もコシがあっておいしい」

ということだけだ。

 

 

KINYAにあとで感想を聞かれたらなんて言おう…

と思いふとKINYAの方に目を向けると、KINYAは釜揚げうどんではなくカレーうどんを食べていた。

 

おいいいい!ここは釜揚げがおいしいんとちゃうんかいいいい!

 

とは誰も言えず。

 

KINYAは華麗なる一族ではなくカレーなる一族だったようだ。

 

 

さて、お会計を済ませた僕たちは今度は海岸散策でなく、海水浴を楽しむため海へと向かった。KINYAも連れて。

 

海へ着くとKINYAは

「ほな、おっちゃんちょっとそこらブラブラしてくるから、帰る頃に声かけて~」

と言ってどこかへ行ってしまった。

 

KINYAにはもう用はないから別に声かける必要ないけどなぁと思いながら、僕たちは水着に着替えた。

 

香川の海は少し冷たかったけどすぐに慣れた。

 

泳いだりビーチバレーをしたりしている間にあっという間に時間は過ぎた。

 

香川の海を堪能した僕たちは帰り支度を始めた。

 

忘れ物がないか確認し、次はいつ来れるかわからない香川の海に別れを告げた。

 

車に乗り込む直前に誰かがふと

「あれ、KINYAは?」

と言った。

 

忘れていた。KINYAのことを完全に忘れていた。

 

いや、別にKINYAのことは忘れてこのまま帰っても何の問題もないんだけど、僕たちはKINYAを探した。

 

しかし、KINYAらしき影は見当たらない。

 

 

KINYA、どこへ行ってしまったんだ。

 

僕たちは必死にKINYAを探した。

 

向かいのホーム、路地裏の窓。こんなとこにいるはずもないのに。

 

すると遠くにKINYAのような老齢の男性のシルエットを発見した。

 

「KINYA!!」

 

僕は走った。

 

自分でもなぜ走っているのかわからない。

 

KINYAの元へとただひたすら走った。

 

 

必死で走って駆け寄ったが、老齢の男性はKINYAではなかった。

 

 

近くで見ると全然KINYAに似ていなかった。

 

どっちかというと中尾彬に似ていた。

 

AKIRAだった。

 

AKIRAに用はない。

 

真夏のAKIRAはさすがにネジネジストールをしていなかった。

 

 

僕たちはKINYAとの再会を諦め、車を出発させた。

 

 

さて、夕食はどうしようかという話になったが、誰もうどんを食べたいとは言わなかった。

 

 

3食がっつりうどんを食べる気だったけど、残念ながら2食で全員うどんに飽きてしまった。

 

 

あんなにおいしいうどんでも飽きてしまえば食べたくない。飽きって怖い。

 

 

そう思いながら立ち寄ったガストのハンバーグがそりゃあもうおいしかった。

 

ーーーー

 

ーーーー

 

その後僕たちがKINYAに再会することはついぞなかった。

 

KINYA、一体何者だったんだろう。

  

なぜ僕たちにうどん屋さんを紹介してくれたんだろう。

 

なぜ忽然と姿を消してしまったんだろう。

 

なぜ関西弁だったんだろう。

 

数々の謎を残してKINYAは消えた。

 

 

今思い返すと、KINYAはうどんの妖精だったんじゃないだろうか。

 

 

ちょっぴりいたずら好きの妖精が、姿を変えて僕たちと遊びにきたんじゃないだろうか。

 

そう考えるのが一番自然とすら思える。

 

もしかしたら僕たちにだけしかKINYAは見えていなかったのかもしれない。 

 

若者にしか見えないタイプの妖精なのかもしれない。

 

おっさんになってしまった今でも香川に行けば会えるのかなあ?

 

ねぇ、KINYA。答えてよ。

 

そしてもう一度あのお店を案内してよ。

 

 

実際のところ、今となってはKINYAが北大路欣也に似ていたかどうかもわからない。

 

KINYAの顔が全然思い出せないんだ。

 

ただ一つ、一つだけはっきりと覚えているのはーー

 

 

KINYAはその老齢な見た目に反してコシがしっかりしていたことだけだ。

 

 

 

 

 

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