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衣替えとは「推しの卒業」である(3000文字チャレンジ)

 

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衣替え代行サービスがあればいいのに。

 

と思うくらいとにかく衣替えが苦手だ。

 

衣替えはだいたい6月と10月に行うものらしいけど、そんなこと言われたって、6月になる前も10月を過ぎてからも暑い日があったら夏服を着るし、その逆もまた然り。

 

一度衣装ケースに入れっちゃったらまた引っ張り出すのも面倒だ。

本当に面倒くさい。

 

とは言えこれが恒温動物の宿命なのだから仕方ない。

 

いっそのこと1年中半袖で生活して、冬場は冬眠してしまえば衣替えなんてしなくてもいいのに。

 

その方が色々と世の中が上手くいく可能性もなきにしもあらずな気がしないでもない。

 

 

そもそも衣替えという風習は、平安時代の宮中行事から始まり、民間にも浸透していったようだ。

 

ってことはそれより以前の人たちは、衣替えなんてせずに1年間生活をしていたことになる。

 

みんな我慢してたのかな?

 

その場合、寒さを我慢してたのか暑さを我慢してたのかどっちだろう。

 

みんなクソ暑い中我慢して外で蹴鞠りをしたり、クソ寒いのを我慢して和歌を詠んだりしていたのかと思うと一気に優雅な雰囲気が台無しだ。

 

そこらの熱血部活動よりよっぽど根性がないとやってられない。

 

そういえばその時代の和歌って

 

「山に服干してあるから夏が来てるみたいやわ」

 

とか

 

「花摘んでたら服にめっちゃ雪積もってきてんけどw」

 

とかの季節に関する唄はけっこうあるけど、

 

「いと寒し」

とか

 

「この暑さ、うし」

とか

 

暑さや寒さを嘆く表現って全然ない気がする。

 

寒暖の差が今ほどなかったのかなぁ。

 

当時はエアコンはおろか、ストーブも扇風機もなかっただろうから1年中同じ服装で過ごすのは至難の業だと思うけど。

 

せめてAIRismとかHEATTECHがあればマシだっただろうに。

 

 

それはともかくとして、平安時代からってことは日本人は1200年余りも毎年ゝ衣替えを繰り返してきたことになる。

 

1年に2回行うから2400回。

 

こう書くと多いような少ないような。

 

でもそうやって僕たちの先祖がずっと、暑さや寒さを凌いで生きて来たおかげで今の僕たちがあるんだと思うとなんだか感慨深い。

 

夏になれば冬服を脱ぎ、冬になれば夏服を脱ぐ。

 

こうして少しずつ人類は進歩してきたわけだ。

 

なんかこれって、脱皮に似てるよね。

 

昆虫とか蛇とか、体が大きくなったら脱皮してそれまで着ていた皮を脱ぎ、その度に成長していく。

 

脱皮をする度に成長していく変温動物と、衣替えをする度に成長していく恒温動物である我々人類。

 

なるほど、生物ってのは実によくできてる。

 

ってことは衣替えってのは人間が生命を存続させるために絶対に必要なことだったわけだ。

 

それならさ、”衣替え”っていう名前じゃなくてもっと崇高な感じの名前にした方がいいんじゃないかな?

 

どうも”衣替え”ってなんか響きが可愛くてなめられてる気がするんだよね。

 

例えば

 

「暑寒替衣」

 

とかさ、もう思い切って堅苦しい名前にしちゃえばいいんだよ。

 

こうすればもっと、お盆とか正月みたいな感じで国民的行事感が出るでしょ。

 

なんなら祝日を専用に作ってさ、学校とか仕事も休みにして。

 

年末の大掃除みたいな感じで

「これしなきゃ年越せないんだよー」感を演出してさ。

 

どう?

 

このアイデア良くない??

 

かなり良い考えだと思うんだけど。

 

絶対良いよ、「暑寒替衣」の方が。

 

 

”衣替え”ってさぁ、やっぱり名前がよくないよね。

 

僕は小さい頃に初めて衣替えって言葉を聞いた時、「子ども替え」だと思ってすごく怖かったんだよね。

 

なんか海外の番組で家族を限られた期間入れ替えるっていう番組あったでしょ?

 

あんな感じでどっかの家族の子どもと入れ替えられるのかなぁって。

 

きょうだいの中で一体誰が「子ども替え」に選ばれるのかとハラハラしてた。

 

もしも実際にそんなイベントがあったとしたら、日本中の家庭できょうだいたちがお互いを出し抜いたり告げ口をしたりするんだろうか。

 

そんであれだよ、うまくきょうだいを出し抜いたはいいけど、子ども替えに出された家庭の方が裕福で余計に嫉妬したり。

 

もしくは子ども替えに出された方の子が大きくなってから復讐に来たりするんだよきっと。

 

あれ、怖いけどちょっとおもしろそうだな。

 

こういうフィクションがあったらぜひ読んでみたい。

 

  

あとは”衣替え”って文字だけを見ると「衣装チェンジ」というニュアンスが強い。

 

アイドルとかが公演の合間でやるやつ。

 

「え?いつの間に着替えたの??」

 

ってくらい超スピードで着替えたり、

 

「何回着替えるんだよ!!」

 

ってくらい1つの公演で何度も衣装を替えたり。

 

なんならあれこそが真の”衣替え”だよね。

 

しかも彼女らはその衣替え(=衣装チェンジ)を繰り返していくことでアイドルとして成長していくんだよ。

 

脱皮だよ脱皮。

 

どうして彼女らがやりすぎとも言える衣替えを超スピードで繰り返すのかというと、アイドルには寿命があるんだよね。

 

ずっとアイドルではいられない。

 

アイドルでいられる時間には限りがある。

 

だからこそ彼女たちは猛スピードで脱皮を、衣替えをして成長していく。

 

1年に2回しか衣替えをしないファンたちは、アイドルの急激な成長についていくのが必死。

 

そして猛スピードで成長していった彼女たちはある日気付く。

 

「これ以上は脱皮できない……!」

 

 そう、永遠に衣替えができるわけではない。

 

脱ぐ皮がなくなっては脱皮ができない。

 

アイドルとしての成長に限界を感じた時、彼女たちはアイドルを「卒業」する。

 

 それはまるで、脱皮を繰り返した幼虫がさなぎになり、蝶になって広い世界に羽ばたくように。

 

そしてそこにはぬけがらだけが残る。

 

蝶になった彼女たちは、かつてアイドルだった時に来ていた衣装を着ることはもうない。

 

落ち着いた雰囲気の衣装を身にまとう。

 

 そうか、これが「卒業」か。

 

アイドルから一人の女性へと衣替えしたってことか。

 

僕は彼女たちに特別な感情を抱いているわけではないんだけど、いわゆる”推しアイドル”が卒業してしまった時のファンの心境はいかばかりだろう。

 

さなぎのぬけがらをいつまでも見つめているのだろうか。

 

ぬけがらのような表情で。

 

卒業してしまったアイドルをいつまでも追いかけるのだろうか。

 

彼女の幻影をいつまでも追い続けるのだろうか。

 

いや、きっと彼らもいつかは新しい”推しアイドル”を見つけるはずだ。

 

そして再び立ち上がり全力で応援することだろう。

 

そう、ファンである彼らもかつての”推し”を卒業し、新たな”推し”へと乗り換えるのだ。

 

古い服を脱ぎ棄て、新しい服を着る時のように。衣替えをするのだ。

 

そして少しずつ成長していくのだ。

 

 

……そうか!

 

衣替えとは、ただ単に見た目を替えるだけでなく、気持ちを入れ替えるという役割も担っていたのか!

 

なるほど!

 

そりゃ1200年も続いてきたわけだ。

 

心のリフレッシュは大事だよね。

 

1年中同じ服を着てたら気持ちがリフレッシュできないもんね。

 

 衣替え、大事。

 

 

 

もしあなたの大好きな推しが卒業してしまい、失意のどん底に落ちることがあったなら、この記事を思い出してほしい。

 

そして新しい服を買って気持ちを入れ替えて、また新たな推しを見つけてほしい。

 

涙の数だけ強くなれるように、推しの卒業の数だけきっと強くなれるから。

 

 

 

すごく心に響きそうな良いことが書けたからこのまま終わってもいいんだけど、せっかくなので衣替えの風習を根付かせてくれた平安時代の人々に思いを馳せて、感謝を込めて衣替えあるある和歌を詠んでおく。

 

 

 

【 春過ぎて  夏来たるらし  白シャツの  衣透けたり  制服の妙 】

 

〈現代訳〉春が過ぎて夏がやって来たようです。前の席の女の子の夏服が少し透けていてなんとも言えませんなぁ

 

をわり

 

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